8/31の東京芸術劇場コンサートホールで開催された演奏会でお元気に指揮されたと思ったら、月が明けた12日にお亡くなりになったそうです。9/5に自宅で転倒し入院。退院したのち、9/12にご自宅で亡くなられたとのこと。そういえば林光さんも転倒がもとでお亡くなりになられたんではなかったかな。
田中信昭さんのお仕事はもちろん多くの方が言及されるでしょうから、ここではいつものように個人的な思いを。
田中信昭さんに対して何より有難かったと自分が思うのは、東京混声合唱団を創設したこと、そして日本の合唱曲をたくさん創ってもらったことです。東混創立時に掲げた目標は下記のとおりです。(東京混声合唱団のホームページより転載)
- 楽しい雰囲気の演奏会を行う。
- 職業合唱団として成立させる。
- 日本の合唱曲を創る。
「楽しい雰囲気の演奏会を行う」はさておいて、「職業合唱団として成立させる」ということは今も変わらない難題でしょう。創立当時はもちろんのこと、今だって経済的に余裕があるとは決して思えません。そのうえ近年はコロナという追い打ちも。経済的な苦労は察するにあまりあります。そんな経済状況がずっと厳しい中、田中信昭さん(それと岩城宏之さんなど)がプロモートして、作曲家に多くの合唱曲創作を委嘱しました。出来上がった作品は本当に宝物と思うのです。そういう思いもあり微力ながら1981年に委嘱支持会に入会しました。
その委嘱作品の中から私が好きな1曲をお聴きください。
追分節考 曲:柴田南雄/合唱:東京混声合唱団
この演奏の指揮は田中信昭さんではなく、指揮者を置かない形になっています。
最初この曲を「合唱音楽の領域」のLPで来たときは良さがまったくわかりませんでした。その後定期演奏会に通うようになり、おそらく第104回定期で初めて生演奏を聴いたと思います。、そこでその場(ホール)にいることの気持ちよさを実感しました。感動というよりは快感といってもいいものでした。
この曲にかかわって覚えていることがあります。実演に触れたことがある方はお分かりになるかと思いますが、指揮者は指揮棒を使わず、文字を書いたうちわで各グループの演奏の入りを指示しています。1987年の文化庁派遣アメリカ演奏旅行の報告会のような定期演奏会で、田中信昭さんがおっしゃったことば(英語のダジャレ?!)。
Fan is more Fun. (ファン ニズ モア ファン)
日本語で言えば、「うちわは(指揮棒より)ずっと面白い」ということだと思うのですが、このフレーズをアメリカの演奏会でも言って笑いをとったのでしょう。この言葉が忘れられません。
長期にわたる幅広いご活躍、本当にお疲れさまでした。
ありがとうございました。
セコメントをする